財布の素材で強いのは「本革」。その中でも強く長持ちするのはエイ革やクロコです。
それ以外でも色々な素材の財布がありどれを選んだら良いのか迷います。
個人的にはコードンバンやブライドルレザーが強い上にベーシックな見た目でオススメです。
この記事では財布の素材で考えられるとにかく丈夫な素材がわかります。
【別記事】長持ちする革を使った財布はこちらでまとめています。
財布によく使われる素材の強さと欠点
財布に良く使われる素材を並べてみました。PU合皮以外は総じて強いのですが、財布として考えると素材の切れ端も重要です。素材自体は強くても縫い目からほころべばダメになります。
以下の表でそれぞれの強度と難点を見ると判断しやすいです。
種類 | 1.本革 | 2.合皮PVC(ポリ塩化ビニール) | 3.合繊 | 4.合皮(ポリウレタン) |
例 | ヌメ革 クロム革 | LOUIS VUITTON | バリスティックナイロン ケブラー コーデュラ | 衣料系。 本革に近い風合い |
強度 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★ |
難点 | 高価/ケア必要 | 安っぽい/反る | ほつれる/子供っぽい | 経年でボロくなる |
本革★★★★★
最も財布に適している。メンテナンスが必要。
種類によりますが、一番丈夫で総じて強いです。
大きくタンニンとクロムの2種類のナメシの方法があり、ベジタブルタンニンナメシが見た目の変化もあり長く使うと味がでます。
クロムナメシは主に衣料用に使われ柔らかく変化が少ない革。革は切端がほつれないのも耐久性につながります。革の種別ごとの強さは後述します。
【革種別の財布まとめ】
合皮(PVC)★★★★★
丈夫さならこれもあり。無名ブランドなら安っぽいことも。
布地ベースにポリ塩化ビニールを吹き付けた型押し素材。端もほつれないですし、経年変化もなくかなり丈夫。ケアも必要ないですし。難点は長年使うと反る可能性があるのと、安っぽさ。
ルイ・ヴィトンのモノグラム柄で有名ですが、ブランドものだから良く見えるのはあると思います。
ヴィトンはブランドもありますが、それ以外のパーツや作りは良いですが、無名ブランドが無地で出したらいわゆるビニール素材です。
生地(強ナイロン)★★★★★
生地端のほつれが難点。子供っぽさも…
防弾チョッキにも使われるくらいに丈夫な高強度ナイロン生地。生地自体は丈夫です。
財布はパーツが小さく、切替が多いのでハシがほつれる可能性は増えます。
合皮(PU)★
避けたほうが無難。
安価な衣類系の合皮はこれ。経年で加水分解を起こしたり、表面がボロボロになる可能性が高いです。
衣類にならまだ良いですが、ハードな摩擦も起きる財布では避けたほうが無難。
年々合皮も進化していて、意外とリアルな質感で肌触りが良かったりして迷いますがオススメはしません。
【本革】動物別の耐久性
オススメはコードバンやブライドルレザー。
「じゃあ何が良いの?」というと財布に最も適しているは本革。下記、動物別での耐久性を見ていきます。
図は一般的にいわれている革の耐久性を右から強い順で並べています。強いほど見た目にも特長があります。
ベーシックな見た目&丈夫でオススメはコードバンやブライドルレザーです。本革の中でもかなり長持ちしますし、使ううちに味がでて見た目が良くなっていくのが最大の魅力です。
長期間使うアイテムで酷使しますが、丈夫な革を選ぶと10年でも持つ可能性はあります。
ここからは革の強い順に個別に説明します。
エイ革/ガルーシャ
革の中でも最も強いと言われています。かなり特殊な革で主成分は人の歯と同じリン酸カルシウム。
そのぶん針も通らず縫製が難しく扱っているブランドが少ないです。
➡エイ革財布【形状別】27種まとめ/長財布/二つ折り/コインケース
クロコダイル
一般的には哺乳類系よりも爬虫類が強いです。身を守るために繊維が密になりまさに鎧。その中でもクロコダイルは別格で牛革の10倍ほど強いといわれています。クロコを分類すると下記の4種。
下記はクロコメーカーで撮らせてもらった写真。種別以外にも個体差や仕上げの差もあるので見分けるのは難しいです。上段4つはクロコと呼べる4種です。
詳しくは全日本爬虫類皮革産業協同組合様のHPで写真付きで解説されています。
*安いものはほぼ型押しでもちろん別物です。
【ワニ革まとめ記事】
➡ワニ革【長財布】61種形状別まとめ比較表★日本ブランド
➡ワニ革【二つ折り財布/ミニ財布/コインケース】51種比較表
リザード(トカゲ革)
爬虫類の丈夫な革で、特徴的な鱗模様は色気があります。クロコほどのクセはないので持ちやすいですね。原皮が小さいトカゲが多く、財布がつくれるくらいの大きいリングマークトカゲは希少です。
コードバン(馬革)
財布の定番素材コードバン(馬革)。馬のお尻の部分で繊維が密な層があってメチャクチャ丈夫です。
迷っている方にはぜひコードバンはオススメ。財布の定番素材なので種類も多いですね。
お尻の部分でコードバンの丈夫な層というのは図の赤部分、少し深い部分のコードバン層になります。それ以外の部分はホースハイド(馬革)と呼ばれライダースなどのアイテムとしてよく使われています。
ホーウィン社のコードバンには毛穴がありますが吟面を削る量が少ないためでワイルドな印象です。
➡まとめ記事:ホーウィン【シェルコードバン】財布まとめ19種 日本製
➡まとめ記事2:コードバンメンズ財布【国産】
コードバンのタンナー
有名なコードバンのタンナーと言えばホーウィン社と新喜皮革の2社。
それに加えて宮内産業やイタリアのロカド社。タンナーではないのですが仕上げ加工で千葉にあるレーデルオガワがあります。
タンナー | ホーウィン🇺🇸 | 新喜皮革🇯🇵 | 宮内産業🇯🇵 | レーデルオガワ🇯🇵 | ロカド🇮🇹 |
生産地 | アメリカ(シカゴ) | 日本(姫路) | 日本(長野) | 日本(千葉) | イタリア(トスカーナ) |
仕上げ | オイル仕上げ | オイル仕上げ 顔料仕上げ | 顔料仕上げ | 染料仕上げ オイル仕上げ | オイル仕上げ |
コードバンの仕上げ
仕上げはオイル仕上げが主流でホーウィン・シェルコードバンが有名。
他にはランドセルで使われる日本特有の顔料仕上げや、染料(アニリン)仕上げの3タイプがあります。
仕上げによって特性が変わるので好みで選択が変わります。
仕上げ | ・オイル仕上げ | ・アニリン染め ・水染め | ・顔料仕上げ |
メリット | ・経年変化がある ・折り曲げに強い | ・透明感がある ・経年変化がある | ・丈夫で扱いが簡単 ・艶が続く |
デメリット | ・毛羽立つことがある ・ブクつきの可能性 ・傷が付きやすい | ・折り曲げに弱い ・毛羽立つことがある ・ブクつきの可能性 ・傷が付きやすい | ・表情がない |
ブライドルレザー(馬具用)🇬🇧
馬具用で開発された特殊加工の堅牢な牛革。
成牛のカウハイドを数ヶ月ピット槽に漬け込みグリースなどを革に浸透させることで丈夫になります。表面の白い粉(ブルーム)はそのグリースが表出した現象です。本場は英国で数社タンナーがあります。
*似た見た目の「蝋引き」は表面にロウが塗られている化粧のようなものであまり意味はないです。
ブライドルレザーのタンナー
ブライドルレザーの本場はイギリスで老舗も多いです。
タンナー | 🇬🇧Joseph Clayton | 🇬🇧Thomas ware | 🇬🇧J&F.J.BAKER | 🇬🇧J&E SEDGWICK | 🇺🇸Herman Oak |
創業 | 1840年 | 1860年 | 1862年 | 1900年 | 1881年 |
使用ブランド | Crevaleathco | GANZO-AVON MUNEKAWA | オークバークの靴底で有名 | GANZO THIN BRIDLE | – |
これらのタンナーのブライドルレザーを使った財布をまとめました。
➡ブライドルレザー【二つ折り財布&三つ折り財布】🇬🇧🇯🇵
➡ブライドルレザー【長財布&ラウンドZIP長財布】🇬🇧🇯🇵
➡ブライドルレザー【ミニ財布&小銭入れ】🇬🇧🇯🇵33種まとめ
ブライドルレザーの部位
ブライドルに多いのはショルダーやベリーの部位。部位まで言及しているメーカーは少ないです。
一般的には番号の順に革の部位としては良いとされます。
部位 | 1.ベンズ | 2.ショルダー | 3.ベリー | ヘッド |
風合い | 硬め | 中間 | 柔らかい | |
所感 | 見た目が良く使いやすい | トラが多い | 脇やお腹でシワも多い。不揃いな見た目。 | パーツで使うかも |
備考 | 血筋がある。 | 最近はトラを味と捉える傾向 | 端材売りは大体ここ |
【牛革】
育って大きくなるほどに丈夫になります。ですが見た目もラフになるので好みが別れます。カーフは一番見た目が良いのですが耐久性の面ではやや劣ります。柔らかいので靴に使われることも多いですね。
🇩🇪ボックスカーフ
カーフを短時間のクロムなめしで仕上げたハリ感があり、肌理の細かい見た目は抜群の高級感があります。
以前は🇩🇪カール・フロイデンベルグが有名でしたが環境規制のために廃業し、今は伝説的になっています。
そのレシピを引きついだのが🇩🇪ワインハイマーといわれています。
ボックスカーフはドイツ以外のタンナーも製造しています。
タンナー | 🇩🇪カール・フロイデンベルグ(廃業)➡ワインハイマー | 🇮🇹イルチア | 🇫🇷アノネイ | 🇫🇷デュプイ |
創業 | 1849-2000➡2003〜 | 1930 | 1838 | 1948 |
🇮🇹イタリアンレザー
世界三大レザーにも数えられ、トスカーナ地方に伝わる古典的な技法バケッタ製法が有名です。
バケッタ製法は長時間ピット槽に漬け込んだベジタブルタンニンなめしの革にオイルを染み込ませた革で、使い込むほどにメチャクチャ味が出ます。1000年以上前から変わらぬ技法です。
タンナー | 🇮🇹バダラッシカルロ社 | 🇮🇹ワルピエ社 |
革名 | ミネルバボックス ミネルバリスシオ プエブロ | BUTTERO |
イタリアンレザーのメンズ財布をまとめた記事
➡【イタリアンレザー】おすすめメンズ財布特集|日本製4ブランド
エンボス(型押し)/顔料塗装
上品な見た目でハイブランドでも人気ですが10年レベルで考えるとあまり適しません。
インポートの有名タンナー&濃色なら大丈夫です。
エンボスの品質面
ヨーロッパ産のエンボスでの名の通ったタンナーの物なら安心です。ラグジュアリーブランドで採用されることも多く、ベースの革も良いものが使われていて、センスの良いカラーが揃っています。
エンボスは表面の凸凹で傷が目立ちにくいメリットがあります。一方、表面の誤魔化しが効くので傷のある原皮や質の低い革で採用されることも多く安っぽい見た目もあります。
【代表的な品番】
デュプイ“チェルケス”/ペリンガー“ノブレッサカーフ”/ワインハイマー“ワープロラックス”
顔料塗装
顔料塗装自体は経年変化が少なく丈夫ですが、新品が一番良く段々と劣化します。型押し+顔料だと黒や茶、ネイビーの濃色は良いのですが最近人気のある淡色系はオススメしません。色の変化は少ないですが一度落ちたり、汚れると補修も難しく味になるというよりは汚くなります。
ⅱ内装革/裏地もチェック
総レザーがベスト。タンニン鞣しの革なら言う事なし。
10年使うなら表革以外の耐久性も重要です。内装や裏地はコストダウンのしわ寄せが現れやすい箇所。
表革がいくら頑丈でもそれ以外の素材がだめになったら終了です。
生地はほつれる可能性がありますし、合皮は必ず劣化します。少量で、耐久性に関わらない部分なら問題はありません。
【低価格品】
裏地なしも多く、見た目もチープですし、芯が貼れないため型崩れの心配もあります。
コードバンなどは革の特性を活かしてあえて裏なしもあるので、説明で言及していると思います。
【バイカー系】
裏地が無いですが革の厚さや硬さでカバーしています。このサイトでは仕事では使いにくいので扱っていません。
ⅲ縫製技術
丈夫さは素材だけでは決まりません。丁寧な縫製も重要な要素です。
財布は日本メーカーの得意とする分野。
カチッとした財布には、日本メーカーの“丁寧にキッチリ作る技術”と相性が抜群です。
中でも日本の老舗メーカーは、日本の厳しい市場に耐え信頼性は高いです。
日本のメーカーは改善し続けます。年数が経つにつれあらゆるクレームを克服し、より欠点が無くなります。
品質改善に関しては海外でも「KAIZEN」として知られるくらい有名ですよね。
国ごとの製品の傾向
私のいち感想ですが国ごとの特長を意識して見ると製品も理解しやすいと思います。
製品はその国の価値観をベースに作られているので頭に入れておくと判断しやすくなります。
日本🇯🇵 | イタリア🇮🇹 | イギリス🇬🇧 |
品質優先 | 見た目優先 | 伝統重視 |
欠点が無いことを重視。 | デザイン至上主義。 | 道具として必要以上の品質は求めない。 長持ちが大事。質実剛健 |
最高峰のビスポークの縫製
製品の最高峰は注文品です。一人の職人か小さい工房で手間暇をかけて注文主のためだけに作られます。
以前はビスポークの製品が世に出ることはほとんどなかったのですが、SNSで職人がアップしています。
トップクラスの商品を見慣れると、キレイの基準が感覚的にわかるようになるのでオススメです。
インスタアカウントをいくつか上げておきます。多すぎて吟味してないですがどれもキレイです。
基本的にはハンドメイド、ハンドソーンです。個人的にはこれくらいに上達したいですね。
NUN-leather&Handmade/made by fa/530leather/collecticeleathersupply
一つみたら関連でぞろぞろ出てくると思います。
➡日本のビスポーク財布ブランドクレバレスコ財布ビスポーク【最上級品質】フルハンドステッチ
財布の素材で長持ちするのは?まとめ
長持ちする財布なら本革の中から選ぶことを強くオススメします。数年で良いなら他にも選択肢はありますが、財布は長く使う物。丁寧に使えば10年以上長持ちすることも十分考えられます。
当然丈夫なほど高価になりますが、10年単位で考えれば結果的に安くなりますし、品質は明らかに良いので所有する満足度も違います。
時代をへて、身の回りの持ち物はだんだん少なくなっていますが、財布は必需品の一つ。
その分、財布に予算を集中すれば選択肢が広がります。
毎日使うものなのでシッカリした品物を選びたいですね。
MARU
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